問、空と宇宙の違いを述べよ。








sky or universe = air ?









ふと、上を見上げると抜けるような蒼。
朝の空気が服の裾を揺らして駆けて行った。
冷たい風は肌に心地よく。

「今日も晴れだね。」
愛車に寄りかかって空を仰いでいた蛮の背後から銀次がひょいと現れる。
それにそうだな、と適当に相槌を返して。
視線は尚も空を捉えたままで、サングラスの奥で瞳が細められた。
今日も空はどこまでも続いている。

暗い鬱蒼とした森に囲まれた狭い空ではないが、高層ビルに遮られた狭い空。
都会だから仕方がないと言ってしまえばそれだけの話なのだが、篭に捕らわれてしまっているような感覚になる。
「なぁ、銀次。」
落ち込んでいく思考を止める為に傍らの相棒に声をかける。
「んあ?」
ぼー、としていた銀次は急に声をかけられて間抜けな声を上げた。
「………。」
どげし、蛮が無言で銀次に蹴りを入れる。
何故だか、無性に腹が立った。

「な、何っ!?」
蹴りを入れられた銀次が、こけた拍子に打った鼻を抑えて蛮に涙目で訴える。
間抜けなその姿を見て自分らしくない事に、あー、もういいわ。と少々投槍になってしまった。
悩むのもアホらしい。
一人で完結して、仰いだ空は相変わらず貫けるような蒼。
空の向こうに広がるのも、相変わらず黒い音のない世界なのだろう。
急に黙り込んだ蛮を銀次が不思議そうに屈んで下から視線を合わそうとする。
が、それは実行される前に蛮の言葉によって遮られた。

「『空』と『宇宙』の違いって何だと思う?」

本当は同じ物。
下から見上げると『空』、周りにあれば『宇宙』。蛮にとっての違いはそれだけで。
それでも銀次にそれを問うたのは、ふと彼の見ている世界を自分も見てみたいというちょっとした好奇心だ。

「空と宇宙…。うーん、」
そうだなぁ、と蛮の突飛な質問に真剣に悩みだした銀次。
こいつのこういう所はいい所だな、と蛮がどうでも良く考えていると、銀次がぱっと顔を上げた。
顔に浮かぶのは、答えを見つけた嬉しそうな笑顔。

「イロっ!!」


「……――色、か。」

自分では思いもつかなかった答えが出て、蛮はなるほど、と頷いた。
「夜明けの空の色は、蛮ちゃんの瞳の色でしょ?宇宙は蛮ちゃ―…、」
「ちょっと待て。」
色の違いを恐らく銀次なりに、一生懸命に説明してくれようとしているのは分かる。だが、それに蛮は銀次の前に手を出して言葉を遮らせた。
「何で俺に一々絡める。」
憮然として言う蛮にだって――、と銀次が嬉しそうに言う。



「世界中全ての綺麗な色が蛮ちゃんに当てはまるくらい、蛮ちゃんは綺麗だから。」



銀次の言葉に蛮が唖然、と固まった。
それを不思議に思いながら、銀次が再び口を開ける。

「とにかく蛮ちゃん、大好きだよ!」

今まで幾多と繰り返された、だが想いは全く薄まっていない告白を誰よりも綺麗な貴方に。













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相変わらずお題消化中。
コレも健ちゃんに奉げます。『魔法をかける』のリベンジのつもりですが、あんまりリベンジできてませんね、はい。
でも、甘いでしょっ?!一応頑張ったんですけど、美堂さんが喋らないから…
相変わらず文章が滅茶苦茶です(涙)