ちょっと解説>>アニメの10話を見て、大佐との約束(?)すっぽ抜かしたその後のエドを妄想してみました(長) 青桐サンに奉げたような気もする小説でした。(解説か?←ほっとけ) 「ほう…?」 受話器を片手に優雅に足を投げ出した格好でロイ・マスタングは不機嫌極まりない声で言った。 Si volumus non redire , currendum est. その不機嫌さを感じ取り、だから電話するの嫌だったんだ、と心中で愚痴を漏らすのは、鋼の錬金術師ことエドワード・エルリック、その人だった。 『だから、悪いと思ってるよ…』 徐々に小さくなる声。 『でも、折角賢者の石の情報が手に入ったんだ。だから、アルと行ってみようと思う。』 電話越しでも分かる、強い意思をもったそれにロイはただ溜め息を付くだけだった。 一度こうだ、と決めたらそれ以外には目もくれずひたすら突き進んで行くのはエドワードの美点でもあり短所でもある。 見た目以上に頑固なその少年をロイが止められたのは、非常に悔しいが、一度も無い。 ロイが付いた溜め息に、エドワードが緊張で微かに息を飲んだのが雰囲気で伝わる。 ロイの表情に、優しい笑みが浮かんだ。もっとも、その笑みの原因であるエドワードはいつ飛んでくるか分からない怒声に気を取られていて、気付く事は無かったが。 「気を付けなさい。」 『……え?』 言われた言葉が予想外だったのだろう、返事には長い間があった。 『怒んないの?』 忙しいのに俺が来るの待ってたんだろ? 申し訳なさそうな小声。 「私が止めたところで行かないと言うわけではないんだろう?」 ロイの言葉に、うっ…。と図星だったのだろう、声が伝わる。 「だから、気を付けなさい。そして、無傷で帰ってくるように。」 『…命令かよ。』 「勿論。私は、私のものに傷が付くのは許せないからね。」 『ばっ…!誰だものだっ!誰がっ!!』 顔を真っ赤にして叫んでいるエドワードの姿が簡単に脳裏に浮かんだ。 それに愛しさが込み上げてくるのを感じて、その愛しさを言葉にするために再び口を開いた。 「愛してるよ、エディ。」 二人で居るときのみに戯れのように呼ばれる名と、一層の愛しさを乗せたそのセリフに、受話器の向こうから響いたのは、言葉になっていないうめきと、 『〜〜〜言ってろ、この色呆け大佐っ!』 僅かに喜色を含んだ叫びに近い、声。 働け大佐。これじゃ給料泥棒だ… 因みに大佐が使っている電話は軍の回線使ってます。他の人に聞かれたりしてたらどうするんでしょうね(笑)まぁ、むしろ喜びそうだけどさ。 そしてこの後エドはすぐに電話を切りました。恥ずかしくって。 因みに題名の文章は、ペラギウスの『退歩することを欲しなければ、走らなくてはならぬ』です。 何となく本捲ってたら書いてたとか言うのは内緒です(死) |