旅の報告にエドワードが東方司令部を訪れたのは今朝早くの事。
大佐の執務室に入り、大佐に暫く待つように言われてソファに横になったのはその少し後で。

…そこから小さな寝息が聞こえ始めたのは、ついさっきの事だ。















光によって唯一なる「光」を求める。
―――フィロン
















「…寝顔は可愛らしいですね。」
仰向けになって寝ているエドワードをそう評したのはホークアイ。

意外そうに言う彼女は普段の少年の様子をしているからこそ、だった。


「クゥー・・ン」
少し開かれていた扉から小さな鳴き声が表れた。
声の元は先日ホークアイに飼われる事となった犬、ブラックハヤテ号。
大人の男の手の平大の大きさの仔犬は一匹で家に残しておくのは可哀相だ、というホークアイの配慮からここ最近は毎日司令部へと来ていた。

小さな歩幅で主の方にブラックハヤテ号は歩き寄る。
エドワードを見ていたロイとホークアイは視線を近寄ってくる犬へ向けた。

一直線にホークアイの方に向かっていたブラックハヤテ号の足が、止まる。
目の前にはソファから垂れ下がっている赤い布。

自分の顔と同じ高さにあるそれを器用に前足を伸ばし、――後足で立ち上がって――完全に爪の生えきっていない足で布の端をひし、とつかむ。
が、それによってバランスを崩したブラックハヤテ号はしりもちを付く形でこけてしまった。

「………。」
何とも言えない顔で一連の動作を見ていたホークアイがブラックハヤテ号を捕まえて腕の中に収めるも、腕の中の小さな犬は赤い布が気になるらしく、なかなかじっとしない。

「こら。」
もぞもぞと動く犬をホークアイが諌める。声が小さかったのは寝ているエドワードへの配慮からだろう。
飼い主の小さな叱咤に賢い仔犬はじゅん、と耳を垂らしてしまった。

「……・…クッ。」
その忠順な姿に、ロイの口から笑いが漏れた。
「…………大佐。」
少々怒気の含まれた部下の言葉に、すまんと小さく返して。

「構わんだろう。」

「は…?」
突然に与えられた許可にホークアイは何の事です?と目で問う。
それには応えず、クスリと小さくまた笑ったロイはホークアイの腕の中からブラックハヤテ号を取った。

しょんぼりとしている仔犬の頭を一回撫でて、そのまま仰向けに寝ているエドワードの腹の上に乗せる。
ころころ変わる景色に小さく首を傾げたブラックハヤテ号はしかし、目の前にある見慣れない物体、機械鎧に興味を持ったのか慎重にエドワードの上を歩いて行く。

胸の上で組まれた指。
進行方向を遮るかのようにあるエドワードの機械鎧に近付くとブラックハヤテ号はそれに寄添うように体を横にし、居心地の良い場所を見つけた、と言わんばかりにリラックスした様で眠り出した。

「………まぁ、鋼のは寝相は良いから犬は落ちまい。」
「………ですね。」
暫くはこのままにしておこう、と犬と少年の保護者達は頷き合う。


カチャ、と仔犬が機械鎧に小さく音を立てさせながらも、擦り寄った。




















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必死(?)に朝、自転車をこぎながら考えてました。ってか、ふと思い付いた話です。
カップリングとかそういうレベルではなく、むしろそれ以前の問題があるであろう小説となりました。ごめんなさい(何)
最近は意味のある小説と絡みのある小説を書くことを放棄しだしております(ダメじゃん)