扉を開けると、常では考えられない程勤勉な上司と、ソファに座って本を読み耽っている金髪の小柄な少年がいた。












「一」より出て「一」に入り、かつ「一」と合致する










「大佐、エドワード君、少し休みましょう。」

ホークアイのセリフに、二人は驚いた表情を浮かべた。


「何ですか?」
「いや、君がそんな風に言うとは珍しいと思ってな。」
「あまり、根を詰め過ぎると失敗の元になりますから。今のところ順調なようですし。」
言葉と共に手を動かし、手際良くコーヒーを入れていく。


入ったコーヒーをトレイに乗せ、一つはロイの机の上、一つはエドワードに手渡した。
エドワードの隣にある本の積み上げられていたテーブルの上を素早く片付けたホークアイはその上に、シュークリームが五つ六つ並んでいる皿を乗せた。

「エドワード君、どうぞ。」
「このシュークリーム、どうしたの?」
「私が作ったのよ。丁度材料と時間があったから。」

ホークアイの言葉に「すげー。」とエドワードは呟く。
「オレが全部食べちゃっていいの?」
首を斜めにして問うエドに

「ええ。」
ホークアイは珍しく笑んだ。


エドワードに視線を合わせようとして、目に入ったのは、金の髪。
長時間イスに座って本を読んでいたときに背中とイスの間で擦れたのだろう、それは少しほつれている。

「エドワード君、食べながらで良いから後ろを向いて。」
ホークアイの言葉にエドワードは言われた通りに背中を向けた。

すっと、髪を止めていたゴムを外し、手櫛で髪を梳く。

「…中尉?」
「折角の綺麗な髪なんだから、ちゃんと手入れしてあげなさい。」
両手で優しくエドワードの髪を好きながら言うホークアイにエドワードは脱力したように呟く。
「オレ、男なんだけど…。」
「あら、男だからこそ、よ。…エドワード君、みつあみじゃ無いとダメかしら?」
「ん?あぁ、別に何でも良いよ。」

シュークリームを頬張りながら言うエドワードの髪を右手に纏め、暫く手で梳いた後に頭の上のほうに括り纏めた、それは。
「ポニーテール?」
「えぇ。これなら動きやすいし、邪魔にならないでしょう?」


うん。とエドワードは嬉しそうに笑む。
「サンキュ、中尉。」
照れたようなその笑いに、反応したのはそれまで大人しく一人でコーヒーを飲んでいたこの部屋の主だった。

「何故、中尉にされると照れて礼までいえるのかな?鋼の。」

「だって、あんたは下心見え見えだし。中尉の手は優しいから。」
エドワードの発言に、ホークアイは不思議そうな目をする。

「手……?」
「うん。母親、じゃないけどそんな感じの温かい、手。」
オレ中尉の手、好きだよ。

その言葉にホークアイは


「ありがとう。」

そう、微笑した。





人の命を沢山奪って、赤を通り越し黒く染まったその手を好きだといってくれた少年を、上司が好きだという理由も分かるわ、と思わず考えてしまったホークアイだった。












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大佐は?
答え:ロイエドの意味を激しく間違えると、こういう事になります(答え…?)
ホークアイ中尉は好きです。例え喋り方が分からなかったとしても。
強い女の人は格好良いですね(陽子ちゃんとかBY十二国記)
一番初めの文章はエックハルトのです。いつもの事ながら、題名と本文が一切関係されてません(汗)