悪魔を見たことがないのなら、自分自身を眺めてみるがよい。












再びまみえた時の少年の瞳に宿っていたのは、いっそ清冽な紅蓮の炎。
その赫が、未だ自分を魅了して止まないのだ。


少年が、国家錬金術師になった、その日に見せた赫。


「何故、オレを推挙した。」

二人だけの執務室に響いた声は何処までも硬質で、その上透明だった。
先程の試験の時とは正反対の少年の態度に、小さく笑みが漏れた。
…尤もそれは底冷しそうなほどの冷たさを伴っていたが。

「君はその理由を分かっていると思ったのだが。」
「あんた、大総統になりたいんだって?」
「ほう…?どうして君がそれを?」
「軍内で噂になってるよ。東の若き大佐殿。」
「それは知らなかった。気を付けておこう。」
「あんたの保身なんかオレはどうでも良いんだよ。さっきの質問に答えろ。」
「だから、言っただろう?君が考えている事と相違無い、と。」

流れるような応答に反して、その場の空気はピクリとも動かない。


二対の瞳が交わる。
オレは――、と年不相応の鋭さを持つ瞳と声が上がった。

「何に変えても手に入れたいモノがある。その為の犠牲は、厭わない。」

例えあんたでも、要らなくなったら簡単に切り捨てる、そう言われた気がした。




最後通告のようなそれを、

「私もだよ、鋼の。」
戦線布告にして返したのは他でもない、自分。



「君を推したのは、史上最年少の国家錬金術師が成果を上げてくれることを前

提とした上のものだ。」

言いながら、ロイの瞳に宿ったのは青い炎。

「期待には当然、沿ってもらう。」

命令の形を取られた言葉に、しかしエドワードは気後れすること無く、むしろ

より一層不敵な表情を浮かべた。


「最後のセリフ、そっくりあんたに返すぜ。」




赫い炎と青い炎が宙で交差する。

だが、双方の色が溶け合い、紫になることは、無い。





私が青で君が赫ならば、果たして燃え、取り込まれるのはどちらだろうね。

問いに鋼の名を持つ少年は、瞳に赫い炎を灯らせただ笑うだけだった。
















一番初めの文章はルーミーのです(ぇ)
さて、問題です。これはロイエドでしょうか。
答え?そんなモノありませんよ(死)ってか私が一番聞きたいです。
ぁ、設定は国家試験のすぐ後です。執務室〜。甘い話にしようと思ってたりし
てたような気もしますが、気のせいだという事にしときます。