コヘレトは言う。 「意味の無い事だとは思わないかね?」 男が笑った。 「何が?」 面白く無さそうに少年は金の髪を弄りながら、返す。 それに気を悪くした風も無く、にやりと笑って。 「全てが。」 なんと言う空しさ ――仮に。 「人間の存在意義が、己の子孫を後世に残す事だとしよう。」 日本の螺旋の最奥に刻み込まれているモノ。 「だが、己の子孫を残して何になるというのだね?」 少年は、何も言わずにただ耳を傾ける。 「意味のない、空しいだけの本能だ。」 なんという空しさ、全ては空しい。 「私が出世をする。君が体を得る。それで、どうなる?」 「あんたの富はあんたの子供へ。俺の体は土に還る、ただそれだけだ。」 それが如何に空しいかと言う事はお互い理解しおえている。 だが、同じ道を歩んでいようとも、見えるものは同じではないのだ。 「俺の答えはこうだ。――――「今」を見ろ。」 どれもみな空しく、風を追うようなことだ。 「先を見すぎると、今を見失う。振り返ってばかりでは今を忘れる。」 つまらなそうに弄っていた髪を後ろに回して。 「全ての行動に最終的な意味が無くても良い。 ――俺には「今」が最優先事項だ。」 強い光に、男はくつくつと愉快そうに笑った。 「なるほど。名言だ。覚えておこう。」 ゆがみは直らず欠けていれば、数えられない。 ------------------ 所々にある引用文は、旧約聖書「コヘレトの言葉」より。 ロイとエド。 文章逃避。 |