コンコン、と控えめなノックの音がする。
扉を開けて、中に入るよう促すと妙な所で礼儀正しい少年は「お邪魔します。」と縮こまった様子で言った。









追尾1.5-3










まぁ、掛けたまえと言われて示されたイスに座ってエドワードは未だ何かに迷っているかのように視線を彷徨わせた。



「………――――――。」

「・…・……。」

「……………――。」




「・・エド?」
長い沈黙を不思議に思い、ロイがエドワードの傍に近付く。
目を合わそうとして膝を床に付いた。すると、エドワードはいきなりロイの胸倉を掴む、そして―――

「…!!」

驚き、息を呑んだのはロイだった。
エドワードはそのまま自分の唇をロイのそれに合わせた。噛み付くようにされるそれに初めこそは驚いていたロイだったが、ゆっくりと懐柔していく。

「エドワード?」

唇が離れた後に発せられたロイの問いかけにエドワードは

「ゴメンっ…」

そう言ってまた顔を俯かせようとする。が、ロイの手がエドワードの顎に掛かり、それは阻まれた。

「謝らなくて良いから、理由を教えてはくれないのかい?」
優しく言われるその言葉にエドワードはもう一度だけ、ゴメン…と小さく呟いた。









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嫌われてしまうのではないか、とか。これでもう終わりになるのではとか言う不安は大きすぎて、エドワードをそこから動け無いように縛り付けていた。だが、今は嫌われる不安よりも、黙っておく事への罪悪感と申し訳なさとが、勝ってしまった。


「最近、つけられてるって言っただろ。」

エドワードは、ロイの顎に掛かった手を外させ、その手を握ったまま言う。静かなエドワードの言葉にロイは、膝をついたままの格好で耳をただ傾けた。

「その三日前位、アルと別行動している時・…っ」
止まった声の変わりに、エドワードの瞳に薄い水の膜が出来た。
「誰かに後ろから殴られてッ・・、それで…。錬金術使えなくて…!!」

言葉は半ば嗚咽となっていた。ロイは先の言葉が分かってしまった。
「分かった。エド、もう言わなくて良い。」
あやすように背中を抱き締め、撫でる。もう大丈夫だから――、そう思いを込めて。

「ゴメンっ…!」
エドワードから何度目になるか分からない謝罪が漏れた。

「何を謝るんだい?」
「だって・・・!!オレを嫌いになッ。」
言葉はロイの唇によってエドワードのそこを塞がれ、途中で途切れた。
唇が離れ、そのまま二人は正面から向かい合った。

「エド、自分の名前を言ってごらん。」
「…エドワード・エルリック。」
「そうだ。私が愛してるのはエドワード・エルリックだけ。昔も今も、未来もずっと。」

君がエドワード・エルリックであり続ける限り、ね。
そう言って、ロイは再びエドワードを抱き締めた。





「…ロイ。」
「ん?」
「跡を。」
「何だい?」

「跡を、消して。」
エドワードの懇願のようなそれに、ロイは、良いのかい?と問う。

「頼むからっ!あんなもの、もう思い出したくない…っ!」
エドワードのその言葉にロイは、


「仰せのままに。」

それから、エドワードの体を押し倒した。














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お話に矛盾が出てきましたが、流して下さい。
いつか裏Verを書きます(つまりまだ書いてないと)

図書館でこんな物書いてる自分にバンザイ。