大佐はときどき、どこか遠くを見ている事がある。 その時、とても悲しそうな顔をするんだ。 Crime エドワードは東方司令部にきていた。 報告書の提出と新しく入荷したという資料を見る為に立ち寄ったのだ。 弟のアルフォンスは以前立ち寄った時に読みきれなかった資料を読む為に書庫に向った。 エドワードはというと、報告書の提出と新しく入荷した資料をもっている大佐に会いに執務室にきていた。 「はい、エドワード君。」 ロイの有能な副官、リザ・ホークアイ中尉はエドワードにホットココアを渡した。 「ありがとうございます。」 エドワードはホークアイからホットココアを受け取った。 ホークアイはロイにはホットコーヒーを出すと、終わった書類を持って部屋をあとにした。 ホークアイが出ていくと、エドワードは1日では終わりそうにないぐらいの大量の書類と格闘しているロイから資料を借りてソファに座り、ホットココアを飲みながら資料を読み始めた。 それからどれぐらいの時間が経っただろうか。 目が疲れてきたので資料にしおりを挟み、冷めてしまったココアを少し飲む。 ふと気になったのでエドワードはいまだに書類と格闘しているはずのロイに目をむける。 あれだけ大量にあったはずの書類はきれいさっぱりとなくなっており、ロイは椅子に座って窓の外を眺めていた。 太陽はすでに傾き、部屋一面をオレンジ色に染めていた。 オレンジ色に染まった部屋の中で、エドワードはロイを見た。 いつもの少し色白な顔は今は夕日の色に染められていた。 しかしその顔にはいつもの意地悪そうな表情はなく、何かを押さえているようなとても悲しそうな表情で…… 「……………。」 エドワードは立ち上がるとロイに近づき、腕をつかんだ。 「ん?どうかしたのか?鋼の…。」 振り向いたロイの表情はいつもと変わらない表情で、それを見てエドワードはなぜか胸が苦しくなった。 そして、思わず口から言葉が出ていた。 「あんたは…なんでそんなに苦しんでるんだ…?」 突然のエドワードの問いかけに、ロイは驚いた。 「…いきなり何を言い出すのかと思えば……。鋼の、私はいつもと変わらないよ。」 微笑みながらロイはエドワードに言う。 「違う。」 エドワードは俯いて言った。 ロイは苦笑しながらエドワードの頭を撫でる。 「いったい何が違うのかね…?」 すると、エドワードは顔を上げてロイの目を見つめた。 「…あんたは…気がついていないのか……?」 その問いかけにロイの頭はさらに混乱する。 いったいエドワードは何が言いたいのか…? 「言っている事の意味が分からないのだが……。」 ロイがそういうとエドワードはロイの服を握り締めて言った。 「違うんだよ!!いっつも冷たくしてきて嫌われているのかと思えば優しくしてくるし、なんかあったとしても俺には何一つ言ってくれないし!それに……!!」 そこでエドワードは言葉を切って俯いた。 「それなのに…なんでそんな傷ついた顔…するんだよ……。そんなに苦しんで……。」 言葉の最後はかすんで小さくなっていたが、ロイには聞こえていた。 「………私は…私の犯した罪は…許されない事だ。」 そうきりだすと、ロイは淡々と話し始めた。 「たくさんの命を奪った…この手で……私は罪人なのだよ。」 ロイは自分の手を見つめてなおも言葉を続ける。 「そんな私が幸せを手に入れてもよいものなのだろうか…?たくさんの人々の命を奪って生き長らえている自分に…幸せになる権利などないではないだろうか……鋼のに関してもそうだ…。君をリゼンブールから連れ出したのは間違いではないだろうか?君を不幸にしてしまったのではないか…私は……私のこの両手は…人の幸せを奪う事はできても…与える事はできないのではないか……そう…思うのだよ…。」 悲しそうに自分の手を見ながら言うロイに、エドワードは胸が苦しくなった。 彼は…今までどれほどの苦しみ、悲しさを味わったのだろう…… それは自分には到底わからないほどの多さだろう。 生きている事への罪悪感、他者の命を奪った時の苦しみ、つらさ、悲しみ それが今までどれほどの苦しみを彼に与えたのだろうか…? 肉体的な傷は時間が経てば治る、しかし心の傷が治ることは難しい。 たとえどれほどの時間をかけても治らない傷もある。 自分の手で治すことができない、他者の手によって治すことのできる傷だ。 自分のこの手で治すことができるのだろうか…? 自分も罪と罰で汚れてしまっているこの両手で 彼のこの傷を癒してやることが…… エドワードは大佐の背に腕を回して抱き着いた。 突然のエドワードの行動にロイは驚いた。 エドワードはロイの服に顔を埋めながら言った。 「…なんて言えば…いいのかわかんねーけど………辛かったらいつでも抱きしめてやるから…一人でためこんだり……すんな…よな……。」 そういうとロイの背中を優しくあやすように撫でる。 するとロイはエドワードの頭をひと撫でして、抱きしめた。 耳元で囁くように言葉を言うとエドワードは顔を真っ赤にしてロイに抱きつく腕の力を強くした。 それからしばらく、ホークアイ中尉が部屋に入ってくるまでロイは、エドワードを抱きしめ頭を撫でていた。 たとえ同じ者同士の傷の舐めあいだとしても、それでもかまわない。 一度背負った罪はとても重たくのしかかってくるものだけれど、 独りで背負うには重たすぎるものかもしれないけれど、 君と一緒なら背負っていけるかもしれない。 君に話すことによって少しだけ軽くなった気がするよ。 「ありがとう……エドワード。」 ―END― |
てりあん様のコメント 初読みきり小説!!! ようやく書けたよ読みきり小説が!!! でもなんか短い・・・・・・ うわ〜ん、すみません!!もっと精進しなくては〜!!! 相互リンク記念にこの小説はyui様に捧げます。 煮るなり焼くなりしてやってくださいませ。 相互リンクありがとうございました〜♪ |
『Night the forest』のてりあんさんから頂きました。 相互リンク記念ですv(正しく言うならば、私が押し付けた駄文のお礼となるのでしょうか…) ロイエドですよ、奥さん!(誰)弱いロイよー!! 弱いロイですが、自分が書くのとてりあんさんが書くのと…どうしてこう、差が出るのでしょうか… 焼くなり煮るなりOKとメールを頂いたので、飾ってみましたv てりあんさん、ありがとうございます! |