[ 過去の遺物 ]





愚か者


「俺と民、どっちだ」
「民」
一拍も置かずに返事。翠の瞳か真っ直ぐに見つめてくる。その瞳も、瞳の持ち主の気性も、言葉が偽りでないことを伝えている。付け入る隙など無い。
「愚問ですね」
心を掴んで離さないあの笑顔で。
「もしかして、自惚れてたとか?」
心を刺す言葉を。選んで欲しく無かったわけはない。だが民のことよりも自分を選ぶようでは先々不安である。などと、モヤモヤした気持だった。しかしここまで
「貴方らしいですけどね」
きっぱりと他を選ばれては。
「…どうしてだ……」
「それこそ愚問です。いったいどんな答えを期待してたんですか。」
二つに一つ。二択を迫っておいて
「聞きますけど、貴方はどうなんですか」
彼女と民
「……」
自分でも選べない。彼女の言う通り、愚かな問いである。それが期待していた答えでなくとも、彼女はハッキリと答えた。答えられない自分は卑怯者なのだろうか。
「ほら、答えられない。どちらを選んでも辛い。でもどちらかしか選べない。」
私にそんな辛い選択させないでください、と。
言われてから気付く、この問いの残酷さ。彼女の気持を疑ったりはしない。彼女にとってもっとも重いであろう二つを秤にかけさせるなどとは。

いつからこれほど愚か者になったのだろう。




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どうなんでしょうか。(コラ)
やっと目標?に近づいた?感じですか?
あれです。小松はたぶん陽子ちゃんにももやもやぐるぐるして欲しかったんだと思います。(書いてる人談)