自習。 のはずだったのだが 「えぇっと」 教壇にはキラが立っていた。 なぜキラが授業をしているかはこの際問題でない。 問題は授業の内容だった。 「物質は〜」 理科Aの普通の授業。 「共有結合は…」 結合。 「結合力は強く、硬さは硬い」 強く・硬い。 真面目な内容ではある。 だが、ここまで微妙な言葉を並べられて 大の大人ならともかく、 揺れ動く思春期の♂どもが、下らない想像をしないわけがない。 そう、顔を真っ赤にして前屈みになっているのはイザーク。 さあ彼は何を考えてたのかな? 「あ?おいイザーク、真っ赤になったりしてどうしたんだ?」 ニヤニヤしながら現れたのはデアッカ。どうでも良いが、彼はとなりのクラスのはず。 授業中に普通にこのクラスに現れたにも関わらず、厚かましくも椅子を動かして腰を下ろした。 イザークの真後ろに。 「なぁ、何考えてんだよ。俺には言えない様な事なのか」 背後から首に腕を回し、のしかかる様に密着しながらデアッカがたずねる。ここが理科室で椅子に背もたれが無かったことは彼に有利に働いた。 甘く囁くような声音ではあったが同時に、有無を言わせぬ響きでもある。 「お!もしかしてこれか」 そう言ってデアッカが覗き込んだのはイザークのノート。そこには震える文字で 結合 か、か硬い と、ページいっぱいに書かれていた。他もちゃんとノート取れよイザーク。 「これがどうかしたのかな」ニヤケたままののデアッカ。 それを見たクラスの全員がヤバい、と思った。実際はデアッカが現れた時点で、全員そう思っていたのだが。 「なあ、なに考えてたのか教えろよ」 しつこくイザークに絡む。 そんなデアッカと床とを仲人してくれる女神・ミリアリアは此処には居ない。今更ながら此処が男子校であることが悔やまれ。 「え、教えてくれないの?」 クラス中の視線が集まっている事など、デアッカにとってはなんでもないらしい。 「じゃあ、当ててやるぜ」 気付けば、デアッカの腕がイザークの腰に回されている。 教室にいた人間の約六割は逃げ出そうとしていた。それが無理だと分かっていても。(キラの授業だから。逃げようものなら皿がうるさいし)残りの四割は興味有りまくりっ★で動向をうかがっている。だから男ぎり集めるなっつの。 「イザ子わぁ、誰と結合したいのかなぁ?」 イザークをイザ子よばわりしたデア。気付けばイザークの股間をズボンの上から撫であげているではないか。 「こんなに硬くしちゃってさぁ〜」 あくまでノリは軽い。 が、逆にそれが怖い。 このまま何処まで逝くのか、周りの人間ははらAドキA。いろんな方向に。 「―――」 イザークはと言えば、瞳をうるませ、下唇を噛んで耐えている。何かに。その姿を見てイザークと似た状況に追い込まれた人数名。 「もしかして、俺と結合してくれんのかぁ」 軽い。が、ねっとりとまとわりつくような響き。デア、セクハラ上手すぎっ★(セクハラ越えてるから。) いや、むしろ俺とっvディアッカさんvv そう思った女神・ミリーを知らない人も数名。無知とは罪です。ときに身を滅ぼします。 とか何とか言よるうちに、デアはイザークのベルトを外しにかかっている。 カチャカチャ、と静まりかえった教室に響く音。 ジリ、と、ついにファスナーの下がる音まで!! バダバダバダ !?廊下からは謎の音が… ガラッ! 「ダコスタくーん!!」 空耳かと思われたそれは。教頭であるアンドリュー・バルトフェルドの発したものだった。 「ダコスタ君!お仕事をさぼっちゃあいけないよ。」 突如現れたアンディは、陽気な足取りでデアに近付く。すると、イザークにベッタリと張り付いていたデアをいとも容易く引き剥がして小脇に抱えあげた。 「え゛!?俺はダコスタじゃねぇヨ」 デアの言葉はノリAのアンディには届かなかった。 「Ha☆Ha☆Ha〜★事務処理が溜ってんだよねぇ。 よろしく頼むよ、ダコスタ君」 そう言って、アンディは風のように去っていった。 ダコスタ君→教員A。事務員でもなければアンディのこま使いでもない。 アンディ!!ダコスタ君は出張中だぞっ。それはデアだ。 嵐の過ぎ去った後、残された人々は安心したり、悔しがったり、3人に何があるのか妄想を膨らまし、ついでにソレも膨らまし、何だか萎えちゃう奴もいたり、まあ、そんなもん。だから♂を集めんなって。ねぇ。 で、ほったらかしにされちゃったイザーク。 いきなり襲われて可哀想に。おーぉー、よしA、怖かったろう… 「…ぐすっ……クッ……!!」 あ゛ぁ、泣いちゃって。 よっぽど怖かったんだねぇ(しみじみ) 「…クッ……ディアッカの馬鹿野郎…ぅっく…ヒック…ん゛ー」 あー、マジ泣きだよ 「俺より教頭の方が良いのか!チクショウ!!」 はぁ。 「デアッカのホー○!!年増好きぃ〜!タラシめっ!」 あ゛〜ん゛、デア獲られたー(ToT)じゃねぇよ!!お前も○モだろっ!!! ズボン下ろされかけのまま、泣き叫ぶイザーク。やっぱり、と思った奴等、うげー、と思った奴等、応援するわ、と思ったアホなど。このクラスはどうなんだか。 こんな感じで日々が送られる。単発式!私立○○学園(♂校)物語。[シリーズ化の予定皆無。十二熱が来て、その後なら有るかも。] 皿のその日の理科のノート。 [フフ、キーラvv白衣だなんて、僕を誘ってるのかい? 何、共有?今更何を言うんだい!君の全ては僕のモノだろぅu勿論、僕はキラだけのモノだしねっ★ 結合!!!今日のキラは大胆…―――] 後半部分は鼻血とおぼしき血痕により、読解不可。 このノートを提出した際、理科教員の計らいでキラがコメントを書くことになった。 ただ一言、赤ペンで「キモイ」と それがキラの書いたものだと知らない皿は、理科教員に猛抗議をしたとかしないとか。 サツキにはやはり変態の才能があるかのようです。 |