「…お母さん、何してるの?」
フェンス越しに声を掛けられたのは男・渋沢克朗。妊娠出産の経験はない。




月のない夜は憂いもない





夏休みが終わって、体育大会が終わって。
残す所は文化祭のみ!秋も深まり始めた今日この頃。
裏庭の掃除当番は渋沢だった。彼以外には振り回して遊ばれる以外のことがほとんどない竹箒で、せっせと落ち葉を集める。思ったより量が多かったのでちりとりで取るのは諦めた。用務員室へジョウレンを取りに行く。
ジョウレン片手に戻って来て、さあ掃除も終わりだと、思ったとき。
渋沢の目の前には彼の大嫌いな爬虫類。しかも最悪な事に蛇がいたのだ。
「(ヤ、ヤバイ…目が合った……!?)」
途端、渋沢の体は硬直する。同じく蛇も、動きを止めた。
蛇の色は赤茶色。嫌な感じにまだら模様が入っている。
「(もしかしなくても、毒蛇!!!?)」
渋沢の顔が青ざめて、泣き出しそうな勢いだ。このとき、フェンス越しに声がかかる。
「…お母さん、何してるの?」
フェンスの向こう、女子棟側にいたのは1年生。入学式の後にある在校生との顔合わせで、渋沢に"お母さんみたい"と言って以来、そう呼びつづけているツワモノである。
「い、いや…蛇…そこ………」
いつもならお母さん呼びに注意をする渋沢だが、今はそれどころではない。言葉も片言くさいし。
そんなにキライならば顔を背けて逃げ去ればいいものを。
「(だって目が、目が、目がーーー!!)」
「蛇の人がいるの!?」
硬直している渋沢なんて何のその。は蛇と聞いて嬉しそうな声をあげた。日本語の使い方がおかしい事は気にしてはいけない。
おわかりの通り、ちょっぴりずれた子ですから。
「待って、お母さん!まみちゃん呼ぶから逃がさないでね!!」
かなりの無茶を渋沢に言ったは、色素の薄い髪をふわふわと揺らしながら何処かへ去った。渋沢は青い顔で一人突っ立っている。
「(うわ、ちょっと、さん!ひ、一人にしないで欲しいんだが…助けてくれないのかー!!)」
蛇の方も相変わらず、渋沢を見上げたまま動かない。
「(何でささっと冬眠しておいてくれないんだ…)」


「お母さん、ちゃんと捕まえておいてくれたぁ〜?」
秋の初めとはいえ、夕方の気温は低い。寒さと恐怖で震えそうになっていた渋沢の所へ、が帰ってきた。
「(いや本当にそんなの無理だからさんっ)」
背後のに心の中でだけ突っ込む渋沢。
渋沢の背後=男子棟側。壁とは越えられるためのものなのだ。
「うわぁ!本当に蛇の人だー。」
顔の筋肉がそろそろ引き攣り始めた渋沢をよそに、は蛇へと近づく。しゃがみこんでまじまじと蛇を見ているではないか。
「こ、怖くないのか……」
渋沢は声を絞り出してに聞いた。
いや、声出せるなら助けでも呼べよ。
「ん〜、怖いけどね。でもね、私が蛇の人怖いのと同じに、蛇の人も私が怖いのよ!!」
「(いや、俺のほうが蛇を怖い!!!絶対!!)」
はともかく、渋沢までズレてきた。恐るべし蛇パワー。(なんだよそれ)
しばらく蛇を眺めて満足したのか、はおもむろに腕を伸ばして掴んだ。
蛇を。
もちろん、噛まれないように頭と言うか首と言うか、そこらへんを掴む。
「(な ん で 掴めるんだ!)」
いいえ、そこよりも、何のために掴んだのかに突っ込もうぜ渋沢さん。
は片手に蛇を掴んだまま、パタパタと渋沢の方へと歩く。
「(うわぁ!!よらないでくれ!)」
正確には渋沢の後ろに居た人物の方へ。
「まみちゃん、あげる♪」
「ああ。」
どうにかこうにか視界から蛇が消えて、安心した渋沢が振り返った先には。
まみちゃん、こと間宮。
「ありがとう、。」 「えへへ。まみちゃん蛇の人好きでしょ。」
の次にな。」
蛇と対峙していた緊張からか、間宮の言葉のせいか、渋沢はその場に倒れこんだ。
後日、渋沢の語った間宮に彼女有りとの言葉は、武蔵野森サッカー部内の誰にも信じてもらえなかったらしい。









謝罪。
間宮夢だと言ってみる。まみちゃんって呼ぶと女の子みたいだよねv
オチがないし、落ちてないし、かわいそうなキャプを書きたかっただけだと言って良いですか?
あんましギャグは苦手になってきた…前も上手くはなかったけどな。テンション低いギャグって面白くない………



モドル